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赤ちゃんの心の中にあるEs

今日は職場の新年会だって日に限って、生後2ヶ月の娘が熱を出す

熱を測ると38度超え。パパ、ママ、朝から大いに焦る。焦りまくる。

娘を連れ小児科へ駆け出す妻。
僕はどうしてもはずせない会議があったので、拭いえない不安を抱えたまま出社する。新年会は当然ドタキャン。幹事に謝罪。ごめんねごめんね。

会議を終えると、心配のあまり定時退社の僕。
いつもより早足で、家路を急ぐ。

ただいま!具合は?熱は?勢い込んで奥さんに、娘の具合を尋ねる。


「熱・・・病院で測ったら・・・36.5分だった・・・全然平熱・・・

---え、だって、朝計ったときは、確かに?
ギチリと首を横に向ける。視線の先にはお地蔵様のような、安らかな娘の寝顔。高熱に苦しむ様子はまるで無い。いつもの寝顔。

先生!先生!この娘を!この娘を助けてください!!
閉まるシャッターを叩くが如き勢いで奥さんが病院に駆け込んだところ、既に娘はケロリとしたもので、熱をどう測っても36.5度という値しか出てこない。医師、苦笑。母親、呆然。本人、ぐっすり。
まあ、よかったんだけど。僕のビールが・・・

赤ん坊って、なんだろうって考える。

この頃の乳児にはいわゆる「自我」がないというのが一般的な意見だ。
「自我」がないって事は、つまり他者と自己の境が無いって意味だ。「他者」を理解できないから、「自己」を知覚できない状態。全は一、一は全。世界と自分とが未分化の状態。つまりは二アリーイコール母体内

フロイトの言う精神の3大要素、本能欲求をつかさどるEs、人間としての規律道徳観を司る超自我、そして自己そのものである自我。Esの持つ本能的な欲求で生きているのが赤ちゃん。感情(emotion)はあるけれど、情動(motivation)が存在しない状態。3要素の鬩ぎ合いの中にもたらされた調和(=僕ら)ではなく、感情のみしか存在しない、抑圧の無い、完全に安定した世界。

それってどんな世界なんだろうって考える。
普段の抑圧(超自我)から解放され、自分(自我)が世界と渾然一体となったような感覚望むがままに笑い泣き騒ぐ、包まれたような多幸感。

あ、それと似た感覚、ある。
ほろ酔いの時の感じだ。

赤ちゃんは常にほろ酔いの気持ちよさ?

気持ちよく酔っ払った時ってなんかそんな感じ。
普段の憂さを忘れて、酒の力も手伝ってあんまり話したことの無かった人たちともわいわい一緒になってドンチャンドンチャン騒いでる時の、あのハッピーな感じ。あんなのが赤ちゃんの心の中を占めているんだろうか。だとしたら、けっこう気持ちがよさそうだね。
というか、お酒が楽しいのって、根源的なというか、そういう原初的な快楽を、僕らもどこかで思い出しているんだろうかね。原初回帰願望的な。

あまり飲みにでかけない僕の、貴重な飲酒機会である新年会をフイにした娘は、いつもあんな、フワフワとしたほろ酔いな心持ちでいるんだろうか。
隣で眠る娘は、ミルクでお腹いっぱいの満足顔で、スヤスヤと寝息を立てながら、Esの海をたゆたう。
邪気の無い、すこやかな寝顔。僕は頭を撫でた。
なんだかずるいなあと思わなくも無い。いつもより強めに、ガシガシと撫でた。
この、僕のビールを返せ

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